ノーベル賞を2回受賞した、アメリカのライナス・ポーリング博士らによって研究された医学です。
身体の不調は、加齢やストレス、遺伝的体質あるいは暴飲暴食等の不適切な生活といった様々な理由によって体内の分子が本来あるべき正常な状態でなくなるために起こると考えます。検査結果を分析し不足している栄養素を補給することによって、自らの自然治癒力を高め「健康」になるという理論です。
体内分子のバランスは血液検査で知ることができます。食事による摂取だけでは不十分な場合は、サプリメントによって必要な栄養素を効率よく体内に供給していく方法が最善なのですが、残念ながら我が国では「栄養療法」は医療行為として認められていません。
ご存知のように栄養素の吸収は腸で行われます。ですから、栄養療法である分子整合栄養医学にとって腸はとても重要な臓器なのです。
腸は胃に近いところから、十二指腸、空腸、回腸と分かれています。十二指腸、空腸は消化吸収の役目。全身の免疫組織の中枢を担っている回腸は、7〜8mもある小腸と1mほどの大腸から構成されています。腸には1000種類、100兆個の細菌が住んでいて、その重さは1.0kg〜1.5kgにもなります。腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌と分けられ、それぞれ全体の20%、10%、70%あることが最適バランスといわれています。
100兆個もある腸内細菌は小腸よりも大腸に多く住んでいます。中でも中心となって働くのが大腸の奥深くに住む嫌気性のビフィズス菌。ビフィズス菌は腸内で乳酸菌と酢酸、ビタミンB群を作り出します。食品に含まれるビタミンB群は身体に吸収されにくい場合もありますが、腸内でビフィズス菌によって作り出されたビタミンB群は即、有効に働きます。
小腸は、身体に必要な栄養素と病原菌のように身体に危害を加えるものとを、素早く判別する仕分け人としての「免疫システム」が発達しています。この働きには経口摂取によって取り入れた栄養素のバランスと、腸内細菌によって生み出されたビタミンやミネラルが重要です。
腸は食べ物から摂ったたんぱく質や、もともと身体に住みついている菌に対しては「抗体」を作りませんが、外から入って来る病原菌は排除しようとします。その際に作られるのがIgA抗体(獲得免疫)です。IgA抗体はたんぱく質に最も多いアミノ酸のグルタミンと、ビタミンAを材料として作られ、作るための指令を出すのは腸内共細菌の役目です。
このように腸は栄養素と深く関わりながら、絶え間なく働いています。身体を守り、健康を維持していくためには分子レベルの栄養素バランスに関心を持つことが重要だといえるのです。
(c) Kumiko Kato 2013